
Raspberry Piは、イギリスのRaspberry Pi Foundationが2012年2月に発売した教育用シングルボードコンピュータです。ケンブリッジ大学コンピュータ研究所のEben Upton氏らが、コンピュータサイエンス教育の入り口になる安価なPCを目指して開発しました。クレジットカード大の基板にBroadcom製SoC、HDMI出力、USB端子、GPIOピンを備え、初代Model Bは35ドルで販売されました。Debianベースの公式OS「Raspberry Pi OS」が用意され、教育・電子工作・サーバー・組み込みまで広く使われ、2024年時点で累計出荷数は6,000万台を超え、世界で最も売れたイギリス産コンピュータと呼ばれています。
この記事の目次
- 教育向けSBCの基本構造
- Eben Upton氏が始めた財団
- 教育からNAS・IoTゲートウェイまで
- ミニPC・マイコンとの位置関係
- まとめ
教育向けSBCの基本構造

Raspberry Piの中核はBroadcom製のSoCで、初代はARM11ベースのBCM2835、最新のRaspberry Pi 5ではCortex-A76クアッドコアのBCM2712が採用されています。メモリは512MB〜8GBまで世代ごとに増え、ストレージはmicroSDカードまたはNVMe SSDで賄います。HDMI、USB、Ethernetといった一般的なPC機能に加え、40ピンのGPIOヘッダから電子工作向けの信号を直接取り出せる点が他のミニPCと一線を画す特徴です。
ソフト面ではDebianベースの公式「Raspberry Pi OS」(旧Raspbian)が用意され、デスクトップ環境・ブラウザ・Pythonエディタが最初から揃います。Ubuntu、Fedora、Windows 10 IoT Core、Home Assistant OSなど他のディストリビューションもサポートされています。USB起動・PXE起動・NVMe起動など起動経路も拡張され、教育用途を超えて常時稼働サーバーやNASとしても運用できる柔軟さを備えています。「Linuxの最小単位を手のひらに乗せた」存在として、ハードウェアとソフトウェアの橋渡しを担っています。
Eben Upton氏が始めた財団

Raspberry Piの構想は、ケンブリッジ大学コンピュータ研究所の入学者数が1990年代後半から急減していた問題から始まりました。Eben Upton氏らは、家庭にあるPCがWordやExcelばかりでプログラミングの遊び場として使われなくなったことを原因と捉え、1980年代のBBC MicroやSpectrumのように「いじり倒せる安価なコンピュータ」を再現することを目標に掲げました。2008年に非営利団体Raspberry Pi Foundationを設立し、教育チャリティとして開発資金を集めました。
2012年2月29日に初代Model Bが発売され、初日でElement14とRS Componentsの両販売チャネルが在庫切れになる大ヒットとなりました。Model A、A+、B+、Raspberry Pi 2、3、Zero、4、5、Compute Module、Picoシリーズと約2年ごとに刷新を続け、2024年にはRaspberry Pi Ltd.としてロンドン証券取引所に上場しました。教育チャリティとしての活動も続けており、Code Clubや教員研修、Coderdojoとの連携で世界中のプログラミング教育に貢献し続けています。
教育からNAS・IoTゲートウェイまで

Raspberry Piは小中高校・大学のプログラミング授業で世界中の入門機として使われ、イギリスのBBC micro:bitと並んで欧州の教育コンテンツで採用されました。Scratch、Python、Node-RED、Jupyterといった教材ソフトが最初から動くため、児童でも実機を触りながら学べます。家庭向けではRetroPieやBatoceraといったエミュレータディストリビューションで自作レトロゲーム機を組む遊び方も人気で、Maker系YouTuberの動画ジャンルとして定着しました。
実用面では、OpenMediaVaultやTrueNAS Scaleを動かす低消費電力NAS、PlexやJellyfinによるメディアサーバー、Home Assistantを核としたスマートホームハブとして24時間稼働させる用途が広がっています。産業・農業の現場でもRaspberry Pi Compute Moduleが組み込まれ、データ収集ゲートウェイや簡易PLCとして使われています。教育目的で生まれたボードが、結果的にIoTゲートウェイやエッジコンピューティングの実用機材としても、もっとも手に取りやすい選択肢に成長したことが、Raspberry Piの文化的な大きさを物語っています。
ミニPC・マイコンとの位置関係

Raspberry Piは、Intel NUCのような小型x86 PCより安価で電力効率に優れる一方、CPU性能・GPU性能は控えめで、デスクトップPCの代替としては力不足な場面もあります。Arduino系マイコンと比べるとリアルタイム性は落ちますが、Linuxが動くためサーバーや画像処理、Webサービスのホストといった用途で圧倒的に幅広く扱えます。「Linuxを動かしたいが、フルサイズPCは大げさ」というニーズの中央に位置する存在です。
近年は競合となるSBCも増えました。Espressif ESP32はWi-Fi/Bluetooth付きの低価格マイコンで、軽量センサー連携に向きます。NVIDIA Jetson NanoやOrin Nanoはエッジ推論に強く、AIカメラやロボット制御で選ばれます。RockPi、Orange Pi、ASUS Tinker Boardといった他社SBCも性能で並ぶ製品が出揃いました。それでもRaspberry Piが選ばれ続けるのは、ドキュメントとコミュニティの厚みが圧倒的だからで、新しい技術を試す最初のプラットフォームとしての地位はしばらく揺るがないと見られています。
まとめ
Raspberry Piは2012年にケンブリッジ大学のEben Upton氏らが教育用に立ち上げたシングルボードコンピュータで、35ドルからの安価さとGPIOによる電子工作対応で世界中に広がりました。プログラミング教育・NAS・IoTゲートウェイ・スマートホームなど用途は幅広く、累計6,000万台を超える出荷を記録しています。Linuxを手のひらに乗せた象徴的存在として、当面その地位は揺るがないでしょう。
※本記事はIT用語辞典の手書きドラフトです。公開前に最新情報・出典を確認のうえ加筆修正してください。

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