
Amazon EC2(Elastic Compute Cloud)は2006年8月25日にβ公開され、クラウドコンピューティングという言葉を世に知らしめた起点である。それまでサーバを買い、ラックに積み、電源を引いていた事業者にとって、クレジットカードと数分の作業で仮想マシンが立ち上がる体験は革命だった。本稿ではEC2の中身、インスタンスタイプ、価格モデル、Azure VMやGCEとの違いを、現役運用者の視点で総ざらいする。
この記事の目次
- EC2インスタンスの解剖
- 2006年8月、雲の幕開け
- 現場で多用される構成パターン
- Azure VM/GCEとの比較視点
- まとめ
EC2インスタンスの解剖

EC2の基本要素はAMI(Amazon Machine Image)、インスタンスタイプ、EBSボリューム、ENI(Elastic Network Interface)の4つに集約される。AMIはOS、初期パッケージ、設定をテンプレ化したスナップショットで、Amazon Linux 2023やUbuntu 22.04のほか、自作のゴールデンイメージを登録できる。インスタンスタイプはt系、m系、c系、r系、g系などファミリーが分かれ、用途とコストでマトリクス選定するのが運用の出発点となる。
ストレージはEBSが主役で、gp3、io2 Block Express、st1などタイプによりIOPSとスループットが大きく変わる。インスタンスストア(ローカルNVMe)は揮発するがレイテンシは数十マイクロ秒で、Cassandraのようなレプリカ前提の分散DBで重宝される。ネットワークはVPC内のENIに紐づき、Elastic IPで固定IP化、Security GroupとNACLでL4のアクセス制御を行う。最近のNitroベース世代ではハイパーバイザのオーバーヘッドがほぼ消え、ベアメタル並の性能を出す構成も珍しくない。
2006年8月、雲の幕開け

EC2の構想は、Amazon社内インフラのスケール問題を解く過程で生まれた。Chris Pinkham率いるケープタウンの小さなチームが2003年頃からXenベースの仮想化基盤を試作し、Andy Jassyが事業化を主導。2006年3月に先行公開されたS3に続き、同年8月25日に招待制β版のEC2が世に出た。当初は1種類のインスタンスのみ、米国東部リージョンだけという質素な姿だった。
2008年10月に正式版(GA)となり、SLAも明示されるようになって企業利用が一気に進む。2010年代にはNetflixが自社データセンターを閉鎖しすべてをEC2に移行した事例が話題となり、2017年にはNitro Systemが導入されてハードウェアカードでI/Oを処理する設計に転換。これによりベアメタルインスタンス、より大きなメモリ、高速ネットワーキングが現実的になり、HPCや金融系の高頻度取引まで取り込めるプラットフォームに進化した。
現場で多用される構成パターン

Web/APIの定番構成はApplication Load Balancerの背後にAuto Scaling Groupを置き、複数AZにEC2を分散配置する形だ。CloudWatchのアラームを契機にスケールアウトし、デプロイはCodeDeployまたはRolling Updateで無停止に保つ。SSH踏み台はSession Manager(SSM)に置き換えるのが現在の主流で、踏み台インスタンス自体を不要にし攻撃面積を減らす。
コスト最適化ではSpotインスタンスとSavings Plansが二大武器となる。Spotは最大90%引きだが2分前通知で中断する可能性があるため、KubernetesのKarpenterやEMRのジョブ実行で活用される。永続データは必ずEBSスナップショットで他リージョンへコピーし、Disaster Recovery(DR)対策とする。HPCや大規模分散学習ではPlacement Group(Cluster型)で同一ラックに寄せ、200Gbpsの低遅延通信を引き出す構成も用いられる。
Azure VM/GCEとの比較視点

Microsoft Azure Virtual Machinesは2010年に登場し、Windows Server資産との親和性が強み。Reserved InstanceやHybrid Benefitで既存ライセンスを持ち込める点が、エンタープライズ移行で評価されている。Google Compute Engineは2013年GAで、ホストメンテナンス時のライブマイグレーションが標準装備という珍しい特徴を持つ。
EC2の強みは選択肢の幅と歴史の長さで、インスタンスファミリーは20種以上、世代も7世代以上が並走する。Spot価格は需要連動型で読みづらいが、ピーク時を避けたバッチ処理では他社より安く済むケースが多い。AMI Marketplaceの規模も最大級で、サードパーティアプライアンスをすぐ起動できる。要件次第ではあるが、複数クラウド比較の起点にしやすい存在だ。
まとめ
EC2は20年近くにわたりクラウドの土台を担ってきたが、Nitro化やGraviton(Arm)の登場で今も進化を続けている。仮想マシンを「ただの計算資源」と見るか「自社の延長」と捉えるかで設計は大きく変わる。コスト、性能、運用負荷の三要素を毎年見直し、上層のサービスと併せて最適化するのが王道だ。
※本記事はIT用語辞典の手書きドラフトです。公開前に最新情報・出典を確認のうえ加筆修正してください。

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