
NFT(Non-Fungible Token、非代替性トークン)は、ブロックチェーン上で発行される「他と取り替えのきかない一意のトークン」のことです。Ethereumの規格ERC-721が2017年9月にDieter Shirley氏らによって提案され、翌2018年に標準化されて以降、デジタルアート、ゲームアイテム、会員権、音楽、不動産権利など多様な「所有」をオンチェーンで表現する仕組みとして急速に普及しました。CryptoPunks(2017年)、Bored Ape Yacht Club(2021年)、Beepleの『Everydays: The First 5000 Days』(クリスティーズで約6900万ドル落札、2021年3月)などの作品が話題を集め、デジタル所有の概念を一般社会に押し広げた立役者となっています。
この記事の目次
- ERC-721の登場と歴史
- 技術的な仕組み
- 主要ユースケース
- 課題と現在の論点
- まとめ
ERC-721の登場と歴史

NFTの直接的なルーツは、2017年6月にLarva Labsが発表したCryptoPunksです。10,000体のドット絵キャラクターをイーサリアム上で発行したこのプロジェクトは、当初は無料配布でしたが、後に二次流通でアイテムごとに数千万ドルの値が付くものまで現れました。同年10月にはAxiom ZenがCryptoKittiesをリリースし、ネコの繁殖と売買がEthereumネットワークを一時麻痺させるほどの混雑を引き起こしました。
この経験を踏まえ、Dieter Shirley、William Entriken、Jacob Evans、Nastassia Sachsらが2017年9月にERC-721の草案を提案し、2018年6月にFinal化されました。ERC-721は「tokenIdごとに所有者を持つ」「transferFromで移転」「ownerOfで所有者を取得」といった基本インターフェースを定義し、NFTマーケットプレイスの標準的な扱いを統一しました。2019年にはERC-1155(Enjin提案)が登場し、代替性と非代替性を同時に扱える「セミファンジブル」な規格としてゲームアイテムの標準になっています。
技術的な仕組み

NFTのコントラクトはtokenIdから所有者アドレスへのマッピングを内部に持ち、mint関数で新規発行、transferFrom関数で所有権を移転します。それぞれのtokenIdには通常、tokenURIという関数を介してメタデータ(画像URL、属性、説明文)へのリンクが紐付けられ、メタデータ自体はIPFSやArweaveなどの分散ストレージに置かれることが多いです。オンチェーンに画像そのものを置く「フルオンチェーンNFT」もあり、Chain Runners、Nouns、OnChainMonkeyなどが代表例です。
ERC-20の代替可能トークンと比較すると、NFTは「コピー不能性」よりも「一意性」と「所有者の一意性」を担保する点が本質です。画像自体はインターネットでコピー可能ですが、ブロックチェーン上の所有権記録は改ざんできず、誰が真正な所有者かを誰でも検証できます。ロイヤリティ機能(EIP-2981)により、二次流通の際にクリエイターへ自動的に手数料を還元する仕組みも仕様化され、クリエイターエコノミーの経済モデルとして注目されました。
主要ユースケース

NFTの代表的な応用はデジタルアートとコレクティブルです。Yuga LabsのBored Ape Yacht Club(2021年4月)は、コミュニティ会員権としての性質も併せ持ち、保有者向けイベントやエアドロップで価値を作り出してきました。OpenSea、Blur、Magic Eden、X2Y2といったマーケットプレイスで取引され、ピーク時には月間取引高が数十億ドルに達しました。Beepleの作品をクリスティーズが扱ったことは、伝統的アート界の認知という意味で大きな転換点となりました。
ゲーム分野ではアイテムの所有権をNFT化することで、Sandbox、Decentraland、Axie Infinity、Illuviumなどが資産持ち出し可能なゲームを構築しています。音楽ではRoyal、Sound.xyzが楽曲ロイヤリティをトークン化する試みを続けており、書籍・チケット領域ではPOAPやTokenProofによる「来場証明」「会員権」の用途が定着しつつあります。また、ENS(Ethereum Name Service)やUnstoppable Domainsのドメイン名もNFTとして発行されており、暗号資産アドレスの「人間可読な名前」を所有する基盤となっています。
課題と現在の論点

2021〜2022年のNFTバブル崩壊以降、市場は大きく縮小しました。DappRadarやCryptoSlamのデータでは、月間取引高はピーク時の1割以下まで落ち込んだ時期もあり、投機色の強かったプロジェクトの多くが価値を失いました。「画像のURLをコピーすればよい」「メタデータが集約サーバーに置かれていれば結局中央集権」といった本質的な批判も繰り返し議論されてきました。
現在の論点は、ロイヤリティ強制の是非、メタデータの完全オンチェーン化、SBT(Soulbound Token、移転不能なNFT)による信用情報の表現、Account Abstractionによる体験改善、そしてRWA(Real World Assets、実物資産のトークン化)への応用です。BlackRockのBUIDLファンドが米国債のトークン化を進め、HSBCやSociété GénéraleがNFT/トークン化債券を発行するなど、金融機関のRWAユースケースが2024年以降本格化しています。投機からインフラへとNFTの位置付けが移行しつつある段階で、技術と用途の見極めが今後のキーになります。
まとめ
NFTは、CryptoPunksとERC-721の登場によってデジタル所有という新しい概念を社会に問いかけ、アートや会員権、ゲーム資産の在り方を大きく変えてきました。バブルを経た現在は、RWAやSBTといった実用ユースケースへ重心が移りつつあり、投機の対象ではなく「デジタルな権利を表現するインフラ」としての地歩が固まりつつあります。
※本記事はIT用語辞典の手書きドラフトです。公開前に最新情報・出典を確認のうえ加筆修正してください。

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