
OSPF(Open Shortest Path First)は、同一AS内で経路を計算するIGP(Interior Gateway Protocol)の代表格で、1989年10月にジョン・モイ氏が中心となってRFC 1131としてIETFに公開しました。IPv4向けは1998年のRFC 2328でOSPFv2として整理され、IPv6対応のOSPFv3はRFC 5340(2008年)として標準化されています。Dijkstraの最短経路アルゴリズムを使ったリンクステート方式を採り、CiscoのEIGRPやIS-ISと並んで企業ネットワークやキャリアバックボーンで広く採用されてきました。
この記事の目次
- LSAでトポロジを共有する仕組み
- 1989年RFC 1131からの歩み
- エリア設計とスケール戦略
- IS-IS・EIGRPとの比較
- まとめ
LSAでトポロジを共有する仕組み

OSPFの中核は、各ルータが自分のインターフェース状態(リンクのアップ・ダウン、コスト、隣接ルータ)をLSA(Link State Advertisement)として広告し、エリア内の全ルータが同じLSDB(Link State Database)を共有する点にあります。RIPのような距離ベクトル型と違い、各ルータが「ネットワーク全体の地図」を持つため、ループのない最短経路を独立に計算でき、収束も高速です。LSAにはType1(Router)、Type2(Network)、Type3(Summary)、Type5(External)など複数種類があり、それぞれ用途が明確に分かれています。
LSDBが揃うと、各ルータはエッジとコストからなるグラフ上でDijkstraのSPF(Shortest Path First)アルゴリズムを走らせ、自分を根とする最短木を計算してルーティングテーブルを構築します。コストは帯域幅から算出するのが一般的(Ciscoの既定では10^8/帯域幅bps)で、運用者が任意の値に上書きすることもできます。Helloパケットで隣接関係を維持し、状態が変化するとLSA Flooding(再放散)で速やかにLSDBを更新する仕組みも、収束速度の早さに貢献しています。
1989年RFC 1131からの歩み

OSPFは1988年にIETFのOSPFワーキンググループが設立され、1989年10月にジョン・モイ氏が筆頭著者となってRFC 1131としてバージョン1が公開されました。当時インターネットで広く使われていたRIPはホップ数のみを基準とする距離ベクトル型で、ループ・収束の遅さ・最大15ホップ制限など限界が明らかになっており、オープンな(特定ベンダーに依存しない)リンクステート型IGPとして強く求められていた背景があります。
1991年のRFC 1247でOSPFv2の初版が出され、1998年4月にRFC 2328として整理し直されたバージョンが現在も基準仕様です。IPv6対応のOSPFv3は2008年7月のRFC 5340で標準化され、後にRFC 5838でアドレスファミリ拡張を行い、IPv4とIPv6を1つのOSPFv3プロセスで扱えるようになりました。TE拡張(RFC 3630, 2003年)やセグメントルーティングへの対応(RFC 8665, 2019年)も加えられ、Cisco・Juniper・Arista・Nokiaなど主要ベンダーが揃って実装する事実上の標準IGPとして定着しています。
エリア設計とスケール戦略

OSPFは「エリア」という概念で大規模ネットワークを分割し、LSDBの規模とSPF計算量を抑える設計を持ちます。中心となるArea 0(バックボーン)に他の非ゼロエリアがABR(Area Border Router)で接続される構造を取り、Type3 SummaryやType5 Externalなどのフラッディング範囲をエリアごとに制限することで、トポロジ変化の影響を局所化できます。Stub Area・Totally Stub Area・NSSA(Not-So-Stubby Area)を使い分けることで、外部経路の流入をさらに抑制可能です。
ECMP(Equal-Cost Multi-Path)で複数経路を同時に活用できる点、Graceful Restart(GR)/Non-Stop Routing(NSR)でルータ再起動時にもデータ転送を継続できる点も、企業バックボーンや通信事業者で重要な機能です。近年はEVPN/VXLANを伴うデータセンタファブリックや、セグメントルーティングMPLS/SRv6のような新しいフォワーディング方式にもOSPF(特にOSPFv3 with Address Families)が組み合わされ、古典的な企業WANから最新のSDN/Cloud基盤まで、IGPの「土台」として広く採用され続けています。
IS-IS・EIGRPとの比較

OSPFと並び称されるIS-ISは、もともとOSIプロトコル群の一部としてISO/IEC 10589で標準化された経路プロトコルで、RFC 1195でIPルーティングにも対応しました(Integrated IS-IS)。OSPFがIPv4・IPv6でそれぞれLSAの種別を増やすのに対し、IS-ISはTLV構造で拡張するため、新しい機能を追加しやすい柔軟性があり、ISPバックボーンではIS-ISを採用する例も多く見られます。
EIGRPはCiscoが開発した拡張距離ベクトル型のIGPで、DUAL(Diffusing Update Algorithm)による高速収束が特徴です。長らくCisco独自仕様でしたが、2016年にRFC 7868として情報公開され、他社実装も見られるようになりました。ただしオープン標準の普及度ではOSPFやIS-ISに及びません。RIPは小規模ネット向け、BGPはAS間用途と棲み分けが明確で、現代の企業内・大規模ネットでは「OSPFかIS-IS」の二択が事実上のIGP選定の主流になっています。
まとめ
OSPFは1989年のRFC 1131に始まり、1998年のRFC 2328(OSPFv2)と2008年のRFC 5340(OSPFv3)として整備されたオープンなIGPの代表格です。LSAでトポロジを共有しSPFで最短経路を計算する設計と、エリアによる階層化により、企業WANからキャリアバックボーンまで広く採用されています。IS-ISやEIGRPと棲み分けながら、現代のデータセンタやSDN基盤の土台IGPとしても引き続き使われ続けている枯れた技術です。
※本記事はIT用語辞典の手書きドラフトです。公開前に最新情報・出典を確認のうえ加筆修正してください。

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