
DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)は、ネットワークに接続したホストへIPアドレス、サブネットマスク、デフォルトゲートウェイ、DNSサーバなどの設定を自動配布するプロトコルです。1993年10月、ラルフ・ドロムス編集のRFC 1531として最初に公開され、1997年のRFC 2131で現在広く使われるバージョンに改訂されました。家庭のWi-Fiルータから企業の数千台規模のオフィスネットワークまで、IPアドレス手動設定の手間をほぼ消し去ったプロトコルとして、現代のあらゆるネットワークの土台になっています。
この記事の目次
- DORAの4段階
- BOOTPからRFC 2131へ
- リース管理とアドレス再利用
- IPv6時代のDHCPv6
- まとめ
DORAの4段階

DHCPでクライアントがIPアドレスを取得する典型的な流れは「DORA」と呼ばれます。まずクライアントはIPを持たない状態でブロードキャスト(255.255.255.255、UDP 67/68番)で「DHCPDISCOVER」を送り、ネットワーク上のDHCPサーバを探します。サーバは利用可能なIPアドレスと設定情報を「DHCPOFFER」で提示します。
クライアントは複数のOfferの中から1つを選び、「DHCPREQUEST」を全サーバへ向けて送ります。選ばれたサーバは「DHCPACK」を返して割り当てを確定し、選ばれなかったサーバは予約していたアドレスを解放します。このやり取りはわずか数百ミリ秒で完了し、ユーザーが気付かないうちに端末はネットワークに参加できます。リース期限が近づくと、クライアントはユニキャストでDHCPREQUESTを送って更新(Renew)し、長期にわたって同じIPを使い続けるのが一般的です。
BOOTPからRFC 2131へ

DHCPの祖先は、1985年に標準化されたBOOTP(Bootstrap Protocol、RFC 951)です。BOOTPはディスクレスワークステーションがネットワーク経由でブートするために、MACアドレスとIPアドレスの静的対応を返す仕組みでした。しかし「動的に空きアドレスを割り当てる」機能はなく、管理者が全端末のMACを登録する必要があり、台数が増えると運用が破綻しました。
そこでBOOTPを拡張して動的割り当て、リース期間、設定パラメータの配布などを追加したのが、1993年のRFC 1531です。編集者はシスコのラルフ・ドロムスで、1997年3月のRFC 2131で現在も使われる成熟版となりました。オプションは別仕様のRFC 2132で定義され、デフォルトゲートウェイ、DNS、NTPサーバ、ドメイン名、PXEブート情報など百種類以上のパラメータを配布できます。BOOTPとの後方互換性も持つため、古い機器も同じネットワーク上で共存できる設計です。
リース管理とアドレス再利用

DHCPの巧みな点は、IPアドレスを「永続割当」ではなく「リース(一時貸与)」として管理することです。サーバは各アドレスにリース期間(典型的には数時間~数日)を設定し、クライアントが切断したまま戻ってこなければ自動で再利用します。リース期間の50%が経過するとクライアントは更新リクエストを送り、87.5%でリバインド(別サーバへ問い合わせ)を試みます。ユーザー側は何も意識せず使い続けられる設計です。
プリンタやサーバなど常に同じIPで運用したい機器には、MACアドレスを指定した「予約(DHCP Reservation)」で固定化することもできます。また、DHCPサーバはAPI連携や監査ログを取れるため、誰がいつどのIPを使ったかを後追いできる点も企業運用上の重要要素です。クラウドのVPCでも、内部のIPアドレス割当はDHCPサービスとして実装されており、EC2やGCEインスタンスにIPが自動付与されるのも同じ仕組みです。
IPv6時代のDHCPv6

IPv6ではアドレス自動構成の方式が複数存在します。ルータが配るプレフィックスから自分でアドレスを生成するSLAAC(RFC 4862)と、従来通りサーバから配布を受けるDHCPv6(RFC 3315、現在は統合版のRFC 8415)が併存しており、「アドレスはSLAAC、DNSやドメイン名はDHCPv6」という併用構成(ステートレスDHCPv6)が多くの企業ネットワークで採用されています。
DHCPv6はUDPの546/547番ポートを使い、マルチキャストで通信する点がDHCPv4と異なります。クライアントの識別子もMACアドレスではなくDUID(DHCP Unique Identifier)で行うため、運用設計が変わります。Windows、Linux、macOS、iOS、Androidの全主要OSが対応していますが、ネットワーク機器の設定や監視ツールの対応状況にはまだ差があり、IPv6移行の現場では「v4と同じ感覚では動かない」と気付くポイントとして、DHCPv6が議論にのぼることが多くなっています。
まとめ
DHCPはRFC 2131として1997年に標準化された、ネットワーク設定の自動化を担う基幹プロトコルです。DORAの4ステップで数百ミリ秒のうちに端末をネットワークへ参加させ、リース管理でアドレス再利用も行います。IPv6時代にもDHCPv6として継承されており、ITインフラ運用に欠かせない知識として基本を押さえておく価値があります。
※本記事はIT用語辞典の手書きドラフトです。公開前に最新情報・出典を確認のうえ加筆修正してください。

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