
Cloudflare R2は、CDN大手のCloudflareが2022年5月にGAリリースしたオブジェクトストレージサービスです。Amazon S3とAPI互換を保ちながら、最大の特徴である「エグレス料金(データ取り出し料金)ゼロ」を打ち出し、動画配信や画像配信、AI学習データ置き場など、外部への大量転送を前提とするユースケースで急速に支持を広げました。Cloudflareの広範なエッジネットワークと組み合わせれば、Workersから直接バケットを呼び出して動的処理も可能で、S3からの移行先として検討される機会が増えています。
この記事の目次
- R2が生まれた背景と料金体系
- S3互換APIとWorkers連携
- 向くワークロードと向かないケース
- 導入時の運用ポイント
- まとめ
R2が生まれた背景と料金体系

Amazon S3はクラウドストレージのデファクトスタンダードですが、保存料金よりも「エグレス(外向き転送)料金」が積み上がる構造に頭を悩ませる企業が少なくありませんでした。動画配信や画像配信、ゲーム配信のようにユーザーが頻繁にダウンロードするサービスでは、月額請求の半分以上が転送料金で占められるケースもあります。Cloudflareは2021年9月にR2を発表し、2022年5月に一般提供を開始した際、この転送料金を一切請求しない方針を明示しました。保存料金は1GBあたり月0.015ドルで、Class A操作(書き込み系)が100万回あたり4.5ドル、Class B操作(読み取り系)が100万回あたり0.36ドルという、S3より単純で安価な体系になっています。
ただし無料エグレスは「Cloudflare側の負担」で成り立っているため、無制限ではなく公平利用ポリシーが存在します。極端なP2P的利用や大量のホットリンクで他テナントに影響を与える場合は警告対象となります。とはいえ通常のメディア配信サービスであれば、S3+CloudFrontの組み合わせよりも大幅にコストを下げられるため、Discord、Drupal、Buildkite、Replicateといった企業がR2への移行や採用を公表しています。
S3互換APIとWorkers連携

R2はAmazon S3のREST APIと互換性を持つよう設計されており、aws-cli、boto3、s3fs、rclone、MinIO Clientなど既存のS3対応ツールがそのまま使えます。エンドポイントを https:// に差し替え、アクセスキーIDとシークレットを発行するだけで、既存のスクリプトをほぼ無改修で移行可能です。マルチパートアップロード、署名付きURL、CORS設定といったS3の基本機能は揃っており、移行コストは小さく抑えられます。
Cloudflareらしい強みはWorkersとの統合です。Workersのバインディング機能で env.MY_BUCKET.get(key) のように直接バケットにアクセスでき、オブジェクトを取得しながらサムネイル生成や認可チェック、HTML埋め込みまでをエッジで完結させられます。Cloudflare Imagesや Stream、D1、Queuesと組み合わせれば、メディア中心のWebサービスをサーバーレスのみで構築でき、オリジンサーバーを廃止する選択肢が現実的になります。
向くワークロードと向かないケース

R2は「保存より配信が圧倒的に多い」「データを再生成しづらい」「グローバルに配信したい」ワークロードに強くマッチします。具体的には、ユーザー投稿写真や動画のCDN配信、ゲームのアセット配信、Podcastの音声ファイル、AI推論モデルの重みファイル配布、公開データセットのホスティングなどが典型例です。Class B操作が安いため、リクエスト課金で破綻するリスクも小さく済みます。
一方で、レイテンシ要件が極めて厳しいOLTP的な使い方や、リージョン指定の規制が厳しい医療・金融データには注意が必要です。R2はジオロケーションヒントを与えられるものの、S3のように細かなリージョン固定はしにくく、データレジデンシ要件にはAzure Blob StorageやGCSのリージョン版を選んだほうが安全な場合があります。また、AWS内部のLambdaやEC2との大量データ連携を行う場合は、AWS内通信のほうがレイテンシ・課金とも有利で、R2が常に最適とは限りません。
導入時の運用ポイント

R2を導入する際は、まずバケット単位でアクセスキーを発行し、最小権限を意識した運用を行います。Cloudflareダッシュボード上で「Read only」「Object Read & Write」「Admin Read & Write」を選べるため、アプリケーションごとに専用キーを切り分けるのが定石です。公開バケットはカスタムドメイン経由で配信すると、CDNキャッシュが効きやすく、画像変換などのCloudflare機能と連携できます。
監視面では、Cloudflareダッシュボードのアナリティクスでオブジェクト数・ストレージ容量・リクエスト数の推移を確認できます。コスト管理の観点では、Class A操作が積み上がりやすいバッチ処理(巨大データのコピー・リネームなど)に注意し、ライフサイクルポリシーで古いバージョンや不要なマルチパートを自動削除する設定を必ず入れるとよいでしょう。バックアップ用にBackblaze B2やAWS S3への同期をrcloneで日次実行するなど、別ベンダーへの冗長化も検討しておくと安心です。
まとめ
Cloudflare R2は、S3互換APIとエグレス無料を武器に、メディア配信やAIデータ配布など「読み出しの多い」ワークロードの常識を変えつつあるストレージです。Workers連携によりエッジ完結型サービスも組みやすく、コスト試算とデータレジデンシ要件を踏まえれば、S3一強だった選択肢を見直す強力な候補になります。
※本記事はIT用語辞典の手書きドラフトです。公開前に最新情報・出典を確認のうえ加筆修正してください。

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